[2356] 新聞の事例研究-その6-「すぎない」のひらがな用例

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

彼の言っていることは、脅しにスギナイ

このような場面で「過ぎない」という漢字を使ったりしますが、よく考えてみると、なぜでしょうね。
一定レベルにとどまっているという意味で、「過ぎない」なんでしょうか。
効き過ぎない薬・・・なんて表現もありますから、脅し過ぎない、脅しに過ぎない、ということなのかもしれません。

ちなみに、「効き過ぎない」などの複合動詞では、主たる意味の「効き」を漢字にして、副詞的用法の「過ぎない」をひらがなにすることがあります。
お越しいただく(頂く)
走りはじめる(始める)
飛びだす(出す)
なども同様ですね。このようなケースは、いままでも見てきました。

一方、「脅しに過ぎない」は複合動詞ではありません。
「過ぎない」だけが単独の動詞。
ところが・・・。

副詞的な「すぎない」のひらがな用例
某日の読売新聞

表記揺れという意味では、納得のできるワーディングだと思われます。
つまり、「脅しすぎない」と「脅しに過ぎない」の違いを統一していきましょうということなんです・・・たぶん。
複合動詞の用例に倣う感じで、ひらがなをデフォとする。
うーん、これまた、やっかいなことをやってきましたね。

あるいは、「過ぎる」の使用場面を、「オーバーする」の意味に絞るということも考えられます。
二義を防ぐ手法なんですが、冒頭の語源・・・仮に合っているとして・・・からすると、「オーバーする」の範囲内という気もします。
まあ、いずれにしても、副詞ニュアンスの場合はひらがななんでしょう。

複合動詞ではなく、単独の動詞で副詞ニュアンスって、ほかにどんなものがあるでしょう。
・・・そうそう、「得る」がありました。
起こり得る、やむを得ない、せざるを得ない。
「起こり得る」は複合動詞ですから「起こりえる」ですね。
問題は「やむを得ない、せざるを得ない」のケースで、これを「証にすぎない」の用例に倣うとしたら、「やむをえない、せざるをえない」なんでしょう。
ちょっと、抵抗感あるな。

もし、表記揺れという観点が問われているのなら、「やむ得ない」「せざる得ない」とは言いませんから、漢字でもいい気がします。
あっ、でも「起こりえる」とした時点で揺れるか。
難しいですね。暫時、保留。
とりあえず「すぎない」だけはデフォ化。
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[2355] 箱庭に納まる

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

「彼の箱庭に納まる原稿を書かなければいけないと気付きました」
このメールをもらったとき、思わず膝を打ったものです。
まさしく、その通り。

きっかけは、案件の引き継ぎでした。
老婆心から、バトンタッチするライターへ、ややこい相手の特徴やクセを伝えておいたのです。
そしたら後日、冒頭のメールが送られてきました。
さすがライター。うまいっ。
「箱庭」を、度量の狭さみたいな意味で使ってきましたな。

トイレの流しに箱庭
トイレの水の出るところに作った箱庭

一般に箱庭っていうと、「かわいさ」や「不思議さ」のイメージがありますよね。
なのに彼は、ネガティブなニュアンスで表現してきた。
おもしろいと思いましたね。
「彼の箱庭に納まる原稿を書かなければいけない」
世界感の小ささというのか、現実の寸法が通用しないというのか。
よく、表現されているじゃないですか。
これ、マネさせてもらおうかな。

ついでと言っちゃ、なんですが、ほかにどんな例えが考えられるでしょう。
ライティング絡みに限定してみます。
例えば、食品サンプル・・・うわべの模造だけで中身のない様子。
「あの人は食品サンプルだから、ウケのいいコピーを並べておけばOK」
あるいは、樹海のコンパス・・・言っていることがクルクル変わる。
「樹海のコンパスにならないよう、言質を取っておいたほうがいいよ」
ダメですね。
どうやっても箱庭にはかなわない。
それに、「収まる」っていう含みがいいじゃないですか。
箱庭に収まる。
ちっぽけな世界感に合わせてあげている的な、ある種の侮蔑感すら伴う。
いいなぁ。
好んで使う場面はあまりなさそうですけど、覚えておきたい表現です。

[2354] 新聞の事例研究-その5-ナカグロと読点の使い分け

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

先日の紙面で、「可決、成立した」という表記を見かけ、何となく「アレ?」と思ったんですね。
ナカグロは、原理原則でいえば、名詞を併記する場合に限られます。
同じ紙面からひろってみると、

移民・難民対策
東・南シナ海

などですね。
自分の感覚では、(可決&成立)したなので、ナカグロに含まれるケースのような気がしていました。
しかし、他所でも「可決、成立した」と書かれていたということは、「名詞に『する』を加えた動詞」という扱いなのでしょう。
よって、ナカグロではなく読点だよと。
これ、気をつけていないと間違えそうですね。

ナカグロを使わず「可決、成立した」
30日の読売新聞総合面

同じことは、名詞+的の形容詞でも起こり得ます。
「懐疑・否定的な態度」ではなく、「懐疑、否定的な態度」が正しい。
あー、いままで、どうしてたんだろう。
たぶん、いくつかは間違ってたんじゃなかろうか。
待てよ・・・名詞の羅列であっても、それが文章として他品詞にかかる場合は、どうするんでしょう。

A) 時間、場所的な使い分け
B) 時間・場所による使い分け
C) 時間・場所を考えた使い分け

Aは読点ですよね。今までの流れからして、そういう話でした。
ひとつ飛んでCは、動詞「考えた」の目的語になりきっているので名詞扱い。つまり、ナカグロでもいい気がします。
その間、Bあたりになってくるとわからん。
2文字で迷う。

迷ったら、読点にすべきなんでしょう。
これはね、ナカグロの利用ケースが減りかねない事態です。
わかっていたようで、全然ダメだったな。
ちょっと待って、ちょっと待って。
動詞の連用用法や体言なんかも考えなきゃ。
独特のキレ・走り・・・は正しくない。純粋名詞ではないので。
独特のキレ・爽快さ・・・もアウト。だって、爽快さは形容動詞ですからね。

うーん、運用ベースとしては原則、「と」でつなぐ。
独特のキレと爽快さ
「と」でつなげられない場合、とりあえず読点にしておく。
懐疑、否定的な態度
間違いなく名詞の併記である場合、ナカグロにしてみてもいい。
移民・難民対策
そんなところですかね。

[2353] ある意味、Webのほうが正しい日本語を貫ける

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

いま手掛けている医療本の発行まで、いよいよ、あと1カ月。
まさに、締め切りと戦っています。
今回、途中で判型変更をくらい、文字数が2割がた増えました。
なので、初稿として終わっているはずだった原稿も一からやり直し。
全然、予定していなかったので、ほとんどやっつけです。

さて、紙媒体の場合、常に「文字の折り返し」という問題をはらみます。
折り返しは問題じゃないか。
行頭に「、」や「。」などの禁則が出てくる可能性をはらみます。

メモ帳の編集イメージ
すでに公開済みの、別媒体の文章を拝借

自分は、この禁則の確認にメモ帳を使っています。
バカらしいですけど、行頭から「→」キーを文字数分押していって、そこにウィンドウ幅を合わせる。
メモ帳は等倍フォントなので、要らんことを考えなくてもいいんです。
メディアの指定書体に関わらず、禁則が正確に出ます。
で、これをごまかすために、すったりもんだりするんですね。
要らない「だ」を付け加えたり、してきたを「した」に変えたり。
また、そうすることで、他の部分に禁則が出たりします。

時間のあるときはいいんですよ。
じっくり考えて、ことによっては、文章ごと練り直す。
しかし、いまは、時間との闘いです。
もう、ホント、ごめんなさい。いいかげんにやっちゃってます。
土壇場で判型なんか変えるからだって・・・それはそれとして。

一方、ウェブ編集には「カーニング」という機能が自動的に付いていますからね。
禁則が出たら、自動的に文字間隔を縮めてくれる。
また、文字全体の“厳密な”制限もないですから、原文が生きる。
紙で15文字36行っていったら、15文字36行なんですよ。
これもバカらしいですけど、行頭から「↓」キーを行数分押していって調節する。
当然、ここでもすったりもんだりします。原文が変わるんです。

そう考えると、「Webのほうが正しい日本語を貫ける」んですな。
紙で、もしかしたら、「あれ?」というようなニホンゴを見かけることがあるかもしれません。
でもそれって、この、折り返し調整だったりするんですよね。
自分がそうですから。
紙のほうが正確かというと、あながち言い切れない。なんとなく、そんなイメージはありますけどね。
きょうも、いっぱい、ヘンテコなニホンゴを創りました。

[2352] 「はらむ」のマイブーム

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

かっちょイイ言葉を見かけると、つい、使ってみたくなるもので。
しかも、バカみたいに多用してしまう自分がいます。
それが、どこかの冊子で見かけた「はらむ」。

問題点をはらむ、危険をはらむ、なんて使うと気分じゃないですか。
もともとは「お腹の中にあかちゃんを抱えた」という意味でしょうから、「内在している」とか「完全な形をしていないものの、その姿が見え隠れしている」シーンが適宜。
または、思いきった詩的表現として、

SLやまぐち号は、いったん火をはらむと、ゴウゴウと進んでいった
ウイスキーをその中にはらんだ木の樽は、この後、約3年間も寝かされるのだ

なんて使い方もできます。
「はらむ」。なかなかでしょ。

築地の玉子塚
「はらむ」の象徴的な茶濁でございます

その一方、この言葉は、差別用語的なニュアンスをはらみます。
差別じゃないか、女性固有の状態を平準化して扱っていることへの反目か。
看護婦じゃなくて、看護師。
スチュワーデスじゃなくて、キャビンアテンダント。
どうなんでしょうね。
いまのところ、各所から指摘は受けていません。
そこまで考えていないというのが実情なんでしょうけど。
やっぱり、男女問題に近いデリケートな描写では、使えないのかな。

女性の老後は、独り暮らしというリスクをはらむ
男性は、薄毛になりやすい傾向をはらむ

むしろ、男性とマッチしないですね。妊娠しないもの。
そうなると、ヒトではなくて、モノの描写に限定されるんでしょう。
モノだからこそ、ヒトの比喩が生きる。

この時期、水を大量にはらんだ日本ダムでは、放水イベントが行われる
温かい空気をはらんだ数々のバルーンが、空の彼方へと消えていった

待て待てって。
これは、妊娠末期・・・というか、いっぱいいっぱいに詰まっているシーンですよね。
「はらむ」とは、また違う気がしなくもないです。
水を大量に抱えた、温かい空気で満たされた・・・うん、コッチのほうがしっくりくる。
数字で表すのは難しいけれど、あえて容量率や具現化率にするなら50%以下。
タップタプだったり、思いっきりわかっちゃっている状態は、「はらむ」じゃないんでしょう。
違うかな。
とりあえず、そういうマイルールにしておきます。

[2351] 「抜け」「見せ」は連用形の名詞化なのか

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

プールサイドの見せにも対応

このコピーを読んだとき、すっかり「店」の誤字だと思ってしまいました。
最近、多いんですよね。
この、「抜け」やら「見せ」やらの類い。

動詞の連用形はそのまま名詞として使えますから、いいっちゃ、いいわけです。
熱い走り
端正なたたずまい
ちょこまかとした動き
でも、よく考えたら、「抜け」「見せ」って連用形ではないような気がしてきたんです。
なぜなら、「抜け感」「見せブラ」みたいに使うじゃないですか。
同じ連用形でも、「走り車」とか「動きオモチャ」みたいな使い方はしませんよね。
それぞれ、「走る車」「動くオモチャ」です。
あっ、そっか。走り方や動きっぷり・・・みたいなのもあるか。
でも、連用形用法の問題ではない気がするんです。

垣間見えるよりクリアな「抜け」
「抜け」の良い景色的な茶濁でございます

おそらく、「抜け(る)感」「見せ(る)ブラ」の省略形ではないかと。
「ら抜き言葉」とも違うんでしょうけど、ラ行の省略がなされていると思うんです。
抜けるも見せるも下二段だから、連用形と終止形が同じ。
なので、安易な連用形の名詞化だと受け取ってしまったわけです。

さて、(る)の省略だとすると、ほかにどんなコトバが考えられるでしょうか。
例えば「食べ」。
スゴイ「食べ」をするね、食べログ・・・あっそっか、下一段の例を出す限り、連用形と終止形は同じなんだっけ。

五段活用から拾いましょう。
改めて「しゃべる」。
しゃべタイム、しゃべ部屋・・・言わないな、やっぱり「しゃべり」という連用形になりますね。
「怠る」・・・ダメです、暖房機のオコタになっちゃいます。
五段活用の場合、「らりるれろ」は省略できないみたいです。

わかってきましたよ。
「らりるれろ」を切り離せる下一段に特有の現象なんですね。
待った、待った、上一段はどうだ。
「試みる」・・・試みどき、試み段階、試み感タップリ・・・OKですね。

つまり、上一・下一は、(る)を省略して名詞化できる。
ほかの活用だと、「動きオモチャ」はダメで、「しゃべり部屋」はヨシだったりする。
その点、上一・下一は連用形と終止形が一緒なので、コトバをルーズーに扱える。
本来、「抜け(る)感」なのに、連用形の名詞化っぽくもできる。
でもって、「抜け」と。
これだけ見ると、命令形に思えてきますけどね。
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Author:てつまる
神奈川県を中心にフリーで活動しているライターです。
超IT系を除き、医療・各士業・経営者・アスリートへの取材、アーティストプロモート(情報発信)、イベントレポなどを手がけています。

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