[1396]「参られないと思います」が、なぜおかしいのか

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

駅のホームで、聞くとはなしに、こんな携帯電話のやりとりが耳に入ってしまったのです。
「えーと、参られないと思います」
即座に「伺えないと思います」の間違いだと気付いたものの、どこが誤りなのか、自分でもわからなかったんですね。

まず、「参られない」の「られ」は、可能とみるべきでしょう。
つまり、「I can’t 参る」だと。
これをハズすと、残るは「参らないと思う」なんですが、何か不自然さを感じませんか。
[1378]でも書いたように、一部の謙譲語は、なぜか否定形となじまないのです。

そこで謙譲語を調べてみると、実は2種類あり、
敬意を払う相手がそこにいる場合は「謙譲語Ⅰ」、相手に対する配慮から自分がへりくだる場合は「謙譲語Ⅱ」という説明がありました。
・・・こんな、人を煙にまいたような定義は無視しましょう。
自分なりに解釈し直して、

丁寧な動作が「謙譲語Ⅰ」
相手との上下関係を明白にするのが「謙譲語Ⅱ」

という理解でいいと思います。

親子カエル
上下関係というだけの茶濁でございます

さて、話を戻します。
「参る」は謙譲語Ⅱなので、ポジショニングの宣言ですよね。
自分の位置のほうが低いですよと。

そうしておきながら、意に逆らうというのか、言うことをきかないというのか、反逆のニュアンスを含んでしまうために、「謙譲語Ⅱ+否定」がなじまないのではないか。
同じ例としては「申さない」「いたさない」などで、敬意を払っているんだか、からかっているんだか、良くわかりませんよね。

一方の「丁寧語Ⅰ」は丁寧な動作だから、丁寧なお断りができる。
「伺えません」なら、不自然感はありません。
なので、ある意味、否定形を用いるべきでないのが「謙譲語Ⅱ」・・・という定義もできるわけです。たぶん。

と、ここで、重大な事実に気付きました。
逆接で使う場合、「謙譲語Ⅱ+否定」はアリなんです。
ポジショニングの否定・・・・を逆接するわけですから、下にいることが示せます。

絶対にダメだとは「申しませんが」、おやめになったほうがいいでしょう。
命令を聞くわけには「参りませんが」、おっしゃりたいことは理解できます。

難しいな、日本語。
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[1395]注意したいことが・・・とするときに、注意したいこと

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

良くポイ捨てする人「が」います。

ここに、「気になるのが・・・ことです」を付け加えると、どうなるでしょう。

気になるのが、良くポイ捨てをする人が、いることです。

これは「が」がカブルので、好ましくありません。
一つの文に対して、二つの主語が生じていますよね。
ところがご存じの通り、ダブル「がが」文を、あちこちで散見するのです。

なぎさから見た海の遠景
遠くに見えるの「が」、かつて工場「が」建っていた土地

つまり、シングル「が」文そのものを別の目的語にする場合、文章の構成を変えなきゃいけないんです。

気になるのが、良くポイ捨てする人「を」見かけることです・・・目的格に直す
遠くに見えるのが、かつての工場建設地である・・・一連の名詞に変換

もう少し例文を出してみましょうか。

外国人が含まれる
課金対象となるのが、外国人を含む場合

テレビの見過ぎが、目を悪くする
注意したいのが、テレビの見過ぎによる目の悪化

また、「がが」ではなく「はが」の場合、見た目は正しいように見えます。
しかし、構造的には同じです。

課金対象となるのは、外国人が含まれる場合・・・ではなく、
課金対象となるのは、外国人を含む場合

構造的には、修正が必要です・・・ではなく、
構造的には、修正を必要とします

これですね、意外とできていないんですよ、自分でも。
まず、「修正が必要です」というフレーズが浮かんでしまうのでしょう。
そのフレーズに対して、「できあがった文章は」という主格をそのままはめて、

できあがった文章は、修正が必要です

にしてしまっている。
誰も文句を付けないですけどね。また、気付いて直したとしても、評価されないですけどね。
へたしたら「こだわり」の域かもしれませんが、こういうところって、重要なんじゃないかと思います。

[1394]「バールのようなもの」にバールは含まれるか

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

標題の件。
いまどき、バールとは何かを知らない人のほうが多い気がするなか、定型句のように使われていますよね。
恐らく主眼は「こじ開けた」にあって、バットでも力業でも構わないものの、一例としてのサンプルを表現しているのだと思います。
つまり、バールは含まれると考えていい。

ところが、例示となってくると話は違ってきて、「地獄のような環境」という場合、地獄を見てきた人なんていないわけです。
「雲のような口当たり」「苦虫をかんだような顔」などもそうで、最も身近な「異物」をもって、その様を表現していることになります。
つまり、バールは含まれない。

1394.jpg
見た目がコケのような抹茶せんべい・・・コケは含まれない

これ、現実的な使い分けって、難しいですよね。
読み手のほうは、肌感覚でわかるため、意識しなくてもいいと思うんです。
問題は書き手。
サンプリングか例えなのかによって、注意深く言葉を選ぶ必要があります。

・サンプリングの場合
円板のような形
入道雲が確認されるような天気
帰り道がわからなくなるようなケース

・例示の場合
夏みかんのような風味
鬼のような物言い
切って張ったかのような急ごしらえ

こう見てみると、サンプリングは、事実に限られるんです。人によって違うということがない。
一方の例示はイメージ描写だから、印象に差の出る場合がある。
じゃあ、本題の「バール」ってどうなんでしょう。
「あぁ、これはバールだね。バットじゃないね」
ってところまで絞り込めているんでしょうか。
もし、事実じゃないとしたら・・・。

実はですね、バールのようなの後に「もの」って言葉がくっ付いているの、気付きましたか。
「バールでこじ開けたような」じゃないんです。
「もの」を挟むことで、事実でもイメージでも構わなくなっている。
要は、こじ開けられたんだと。
「もの」によってこじ開けられたんだと。
その「もの」自体は、バールでもバットでも、お好きに解釈してちょうだい。

この、ものすごくトリッキーな仕組みによって、「バールのようなもの」が重宝されているのでしょう。
・入道雲が確認されるような天気・・・入道雲に限定
・入道雲のようなものが確認される天気・・・何でもアリだし、入道雲でもいい
最初に使ったヤツ、すげぇな。

[1393]足し算なのか掛け算なのか、「AやBによるCやD」

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

併用の「や」がダブルとき、その意味するところは幾通りも出現してしまいます。
例えば、標題の「AやBによるCやD」。

1.A+BC+D・・・足し算的な解釈です。
2.(A+B)C+D・・・前半は掛け算、後半が足し算
3.A+B(C+D)・・・前半は足し算、後半が掛け算
4.(A+B)(C+D)・・・すべて掛け算

具体的な例文を探してみましょうか。
悪文が見つかりそうな『政府広報』を探していたら、案の定ありました。

「病気やケガによる緊急移送費用や入院費用の支払い」

おそらく、(病気+ケガ)(緊急移送費用+入院費用)支払い・・・なんですよね。
(A+B)(C+D)のパターンに加え、「支払い」というE項も含んだ、三重の掛け算のようです。
因数分解すると、

病気による緊急移送費用の支払い
病気による入院費用の支払い
ケガによる緊急移送費用の支払い
ケガによる入院費用の支払い

が解になる。
これ、ぱっと見で、わかりますか?

1393.jpg
言わずもがなの茶濁でございます

では、誤解をなくすために、どう修正していけばいいでしょう。
まず、「費用」とあれば「支払い」がらみだと推測されますので、E項は不要でしょう。
次に、前半の「や」のみイキとしてみます。

「病気やケガをした場合の緊急移送費用、あるいは同じケースでの入院費用」

後半の「や」をイキにするとしたら、

「病気をしたりケガを負ったりした場合にかかる、緊急移送費用や入院費用」

好みですけど、後者ですかね。
「や」の乱れ打ちは、都合の良いほうに捉えられるかもしれないので、注意が必要です。
ヤボったいようでも、可能な限り「解」に近い形で記載するようにしましょう。
誤読の可能性が少しでもあれば、抗弁はできないんです。文を書いた人の責任になります。

[1392] 書きコトバの同音異義語

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

幼児と用事のような同音異義語。
文字になっていればわかるため、自分とは無縁と思っていたものの、動画原稿のニーズが増えてきたことで、気を使う必要が生じてきました。
そうじゃなくても、物書きの「ライター」と火を付ける「ライター」のようなカタカナの例だってありますしね。

そうかそうか。
いままでにない観点なので、ちょっと、とまどっています。
例えば地震と自信と自身。
「ジシンはジシンへのジシンがないときにやってくる」
書きコトバだとかえってトリッキーに使えるんですが、音声になっちゃうとね。
そうかそうか。

1392.jpg
ジシンでもゆるがない、ジシンへのジシン

これ、いくらでも出てくるようで。
例えば、強制と矯正と共生と教生と叫声。
キョウセイするのが目的で、キョウセイをキョウセイはしません。そう、キョウセイがキョウセイをあげています。

法律用語が絡み出すと、もっとややこしくなります。
排除と廃除。
ちょっと難しいところで遡及と訴求。
警鐘と敬称と軽症と継承。
使わないって、もともと無理じゃないの?

ワーディングを変えなくても、前後の文脈から判断できるようなときは、こっそり使うしかないですね。
幸いにしてケイショウで済むような努力、そのケイショウを鳴らしていくしかない。それがノウハウのケイショウにもつながるのです。
どうなんでしょ。音声になると、訳がわからなくなるんですかね。

幸いにして軽いケガで済むような努力、その注意喚起をするしかない。それがノウハウの蓄積にもつながるのです。
やはり、こういう原稿がふさわしいように思えます。
あっ、原稿は避けたほうがいいんですか。現行や言行があるから・・・はぁ。

[1391] アクセスなどで使う「より」の誤用

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

ロシア「より」愛を込めて
宇宙「から」のメッセージ

ともに映画のタイトルですが、経路を示す場合、「より」は誤用になります。
少なくとも公文書の世界では、そう規定されているようです。
「より」は比較、「から」は経路で使いなさいと。
ですから、商用文のアクセスなどでは、「から」を使うようにしています。

では、なぜ混同されるようになったのかというと、両方に「選択肢A→選択肢B」という動きが含まれているからだと思うのです。
チャーハン「より」ラーメンと言う場合、チャーハンというバッドチョイスを経由して、ラーメンというグッドチョイスに至るニュアンス。
経由というより、悪いほうへ振って「から」、良いほうを見直す・・・みたいな。
ね。実際、経路の「から」で表現できるじゃないですか。

1391.jpg
『宇宙からのメッセージ』的な茶濁でございます

一方、最寄り駅「から」徒歩約3分という場合。
これは純粋に、起点「から」終点を表し、論じることでもないでしょう。
問題は、一部に、「より」を使ったほうが丁寧に聞こえる・・・という意見のあることなんです。

女王陛下より、謝意が示されました。
篤志家より、寄付が送られました。

でも、公文書チックに読み解くなら、
女王陛下より(も)、(ものすごい)謝意が(誰かさんから)示されました。
と解釈せざるを得ない。
このような二義の可能性がある以上、意識して使い分けていくしかないですね。

最後。ぱっとした思いつきで恐縮ですけど、こんなコピーを考えてみました。
「電気の未来は、火力から再生可能エネルギーへ」
経路としての「から」で間違いないんですけど、ニュアンスとしては比較ですよね。
誤用を加速する使い方と思われるので、個人的には、できるだけ避けていくつもりです。
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Author:てつまる
神奈川県を中心にフリーで活動しているライターです。
超IT系を除き、医療・各士業・経営者・アスリートへの取材、アーティストプロモート(情報発信)、イベントレポなどを手がけています。

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