[2300]「等」の不思議な使い方、「設置等した」

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

「等」と「など」の件。
本論へ進む前に、まずは、記者ハンの大原則から。
漢字の「等」は使わず、基本的に「など」とひらきますよと。
ただし、法律などの名称に「トウ」のヨミで使われている場合は、固有名詞扱いになります。
最近では、「テロ等準備罪」なんかで、良く耳にするところです。
また、この場合、「など」とは読みません。「てろとうじゅんびざい」が正解。

だからといって、「ミカン等(トウ)がお得ですよ」にしてはダメ。
当たり前ですけど、「ミカンなどがお得」が正解。

さはさりながら、先日、某報道が「設置等した」という表記をしていたんですね。
ヨミも「などした」でした。

普通ですよ、「設置など『を』した」って言いませんか。
つまり、「設置した」をアバウトにボカしたい場合、「等」を力業でぶっ込む使い方があるんだと。
レストランで、楽しい会話と食事などをした・・・これが普通。
レストランで、楽しい会話と食事等した・・・やっぱり、おかしいだろって。

樹木の虫食い跡
虫食い等した、樹木の表面

もともと「など」にはいいかげんなところがあって、対象物をボカしても、行為をボカしても、意味は一緒なんですね。
証拠「など」をそろえる準備が必要です。
証拠をそろえる「など」の準備が必要です。

それでいくと設置等の使い方は、対象物をボカしていることになる。
本来、設置+「する」であるところを、設置等+「する」。
設置以外のさまざまな付属行為を丸っとインクルードして+それを「する」で動詞化している。
何か、こう、ふに落ちないわけです。
ちらかったオモチャを箱へ一緒くたにまとめて、「ハイ、整理できました」・・・みたいな。

でもまあ、そのうち、業界の自主規制がかかってくると思います。
だって、どう考えたっておかしいもの。

店内には、飲食物の持ち込み等しないでください。
→店内に、飲食物などの持ち込みはしないでください。
商品を試着等する場合は、店員にお声がけください。
→商品の試着などをご希望される場合は、店員にお声がけください。

だからね、バカなんだよ、きっと。
伝わり方よりも、「こんな難しい使い方等知ってるぞ」っていう自慢を優先している。
そもそも、原則として「等」は使わないんでしょ。
業界の自主規制なんだから、守れって。
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[1399]「は」と「が」のダブり、最終考

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

原則として、一つの文は一つの主語しか持たない。
したがって、主格を示す「は」や「が」も一つであるべき。
ところが現実として、このような「ダメ文」を、しばしば見かけます。

このページ「は」、モバイル端末で「は」使いにくい可能性「が」あります

客車に該当する述語は「あります」だけで、機関車の三両連結になっている。
補うとすれば、

このページ「は」不適切です。モバイル端末で見た場合使いにくい可能性「が」あります

が正しい。
もしくは、以前紹介した得意技、「目的格への変更」を使って

このページ「は」、モバイル端末で見た場合、使いにくい可能性「を」含んでいます

と直すべき。
ところが、「芸能人は、歯が命」って、極めて自然ですよね。
これは、なぜなんでしょう。

1399.jpg
「はが」かみ合わない

自分はいままで、やみくもに「はが」のカブリを避けてきました。
しかし、「芸能人は、歯が命」をダメとする理由が思いつかないんです。

実はこの問題。自分で答を出していました。
それは、「は」の「条件付け」という使い方です。
以前、東京「は」浅草の生まれ・・・という表現を紹介しましたよね。
この場合、「東京さんが浅草で生まれた」という意味ではありません。
東京に「浅草」というフラグを立てて、条件付けたわけです。

「芸能人は、歯が命」も、実は、この条件付けと考えられます。
芸能人の条件といえば、「歯が命」だよねと。
魚は、水がないと生きられない・・・魚の条件として「水がないと生きられない」。
カバは、口が大きい・・・カバの特徴として「口が大きい」。
どうやら、そういうことではないかと。

もちろん「がが文」はNGです。逆接の「が」を含む場合でも、「ものの」で代替して、カブリを避けたい。
職人「が」作ったのだ「が」、受け取ってもらえなかった・・・職人「が」作ったものの、受け取ってもらえなかった
一方の「はが文」は、条件付けならイキ。

我が身への災難「は」、他人「が」もたらす・・・NG。他人によってもたらされる。
我が身への災難「は」、他人「が」もたらすものだ・・・OK。災難の条件付け。
難しいですけどね。

[1398] 書籍とWebの文は、やっぱり違う(書籍編)

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

G.W.を過ぎてからというもの、紙の仕事がひきもきらない、今日この頃です。
以前、Webの書き方は独特・・・という話をしたことがありました。
ブラウザには戻るボタンがあるため、ツカミで勝負、結論を先出しするんだと。
また、関心を維持するため、「さらにズゴイのは」とか「注意したいのは」といった吸引ワードを多用することになります。

一方の紙。
こうしてみると、落ち着いて物事を論じられますな。
あせらなくていい。慌てる必要がない。
吸引ワードなんて、無かったら無かったで困らないんですよ、こんなもん。
紙で見ると、むしろ、せっついているように読めてしまいます。
本を手に取った読者は逃げないので、イイタイコトをじっくり、かみしめながら書ける。

紙面レイアウト
レイアウトが前提になるのも、紙のおもしろさ

一方、制限を受けるのが、レイアウトの問題。
紙はレスポンシブデザインじゃありませんから、テキストの量やスペースが厳密に決まっているわけです。
また、テキストの折り返しも、気を使うところ。
新聞だと・・・確かめずに続けますが・・・15文字じゃなかったかな。
なので、16文字目に「、。」が付くと、行の冒頭に回ってしまうのです。
このことによって、使いたかったコトバを変えなきゃいけないときがあります。
あるいは、意味のない「、」を途中で挟んじゃうか。

ところが、「行の終わりは、半分より下で」という、暗黙の了解的な慣行もあるんです。
1・2文字で終わらせると、下にムダな空白が生まれてしまい、紙面がもったいないと。
なので、ワードに書きなぐりではなく、テキスト挿入で「折り返し」を意図的に発生させつつ、推敲しています。

紙にはこうした「折り返し制限」があるため、「大きなところを先に固めちゃう」という進め方をしますね。
だって、文字数を整えたところで、中身そのものが変わっちゃったら、意味を持ちませんから。
ここも、Webとの違いかな。
初稿に誤字があっても、比較的スルー。
大枠が固まってから、最後に細かなところを見て、「折り返し制限」をクリアする。
好みでしょうけど、紙のほうが、ある意味「やりやすいのかな」と思っています。

[1397] わかっている人の書く、わからない文

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

今回は、専門用語が語弊をもたらすケースの一例です。

半年くらい前でしょうか。
相続に関する最高裁判決で、「預貯金は遺産に含まれる」という見だしが各紙面を飾りました。
これ、
「何を言ってるんだ、当たり前じゃないか」
なんて、思いませんでした?

一般人が考える「遺産」とは、故人が持っていた財産のこと。
その中には預貯金も含まれるわけで、だから疑問を感じてしまうのです。
ところが法律的な遺産とは、話し合い、つまり「遺産分割協議を経て取り分が決まる財産」のこと。
預貯金はいままで、法定相続分通りに分けられるのが一般的で、ある種、相続人の個人財産のように思われていたんですね。

お金は大切だから、もめないで、まず、分割しちゃおうよ。
細かな調整は、現金以外の遺産で図っていこうじゃないかと。

この流れを改め、「最初からお金も含めて話し合いなさい」としたのが、「預貯金は遺産に含まれる」の真意なんです。

棚からボタ餅
預貯金的な茶濁がなかったもので、「棚からぼた餅」

つまり、その筋だけで通る「正確さ」を通そうとすると、かえって誤解を招くことになる。
例外として、一般に知られたくないための符丁は、アリだと思うんですよね。
そうではなく、周知を前提とした場合、専門用語は避けるベキなんです。

さて、このたび成立した改正民法。
未払い金の時効について、新たに「権利を行使できると知ったときから5年」とされましたが、その意味、わかりますか?
単純に、未払い金発生時から5年じゃないんです。
また、うっかり売り掛けがあることを忘れていた場合でもない。それは単なる自分のミスですから。

「知ったときから5年」。これは、例えば債権者が孤独死なんかをして、知らずに権利が相続されていた場合などですね。
知りようがなかったんだから、しょうがねぇじゃねえかと。そういうシチュエーションに限り、時効をカウントするスタート時点がずらせる。
決して、「タンスを探したら、ずっと前に取り交わした書面が出てきた。じゃあ、いまから5年」ではないわけです。
そういう意味の「知った」とは異なります。
修正するとしたら、「棚から落ちたぼた餅をはじめて見たときから5年」ってな感じでしょうか。

[1396]「参られないと思います」が、なぜおかしいのか

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

駅のホームで、聞くとはなしに、こんな携帯電話のやりとりが耳に入ってしまったのです。
「えーと、参られないと思います」
即座に「伺えないと思います」の間違いだと気付いたものの、どこが誤りなのか、自分でもわからなかったんですね。

まず、「参られない」の「られ」は、可能とみるべきでしょう。
つまり、「I can’t 参る」だと。
これをハズすと、残るは「参らないと思う」なんですが、何か不自然さを感じませんか。
[1378]でも書いたように、一部の謙譲語は、なぜか否定形となじまないのです。

そこで謙譲語を調べてみると、実は2種類あり、
敬意を払う相手がそこにいる場合は「謙譲語Ⅰ」、相手に対する配慮から自分がへりくだる場合は「謙譲語Ⅱ」という説明がありました。
・・・こんな、人を煙にまいたような定義は無視しましょう。
自分なりに解釈し直して、

丁寧な動作が「謙譲語Ⅰ」
相手との上下関係を明白にするのが「謙譲語Ⅱ」

という理解でいいと思います。

親子カエル
上下関係というだけの茶濁でございます

さて、話を戻します。
「参る」は謙譲語Ⅱなので、ポジショニングの宣言ですよね。
自分の位置のほうが低いですよと。

そうしておきながら、意に逆らうというのか、言うことをきかないというのか、反逆のニュアンスを含んでしまうために、「謙譲語Ⅱ+否定」がなじまないのではないか。
同じ例としては「申さない」「いたさない」などで、敬意を払っているんだか、からかっているんだか、良くわかりませんよね。

一方の「丁寧語Ⅰ」は丁寧な動作だから、丁寧なお断りができる。
「伺えません」なら、不自然感はありません。
なので、ある意味、否定形を用いるべきでないのが「謙譲語Ⅱ」・・・という定義もできるわけです。たぶん。

と、ここで、重大な事実に気付きました。
逆接で使う場合、「謙譲語Ⅱ+否定」はアリなんです。
ポジショニングの否定・・・・を逆接するわけですから、下にいることが示せます。

絶対にダメだとは「申しませんが」、おやめになったほうがいいでしょう。
命令を聞くわけには「参りませんが」、おっしゃりたいことは理解できます。

難しいな、日本語。

[1395]注意したいことが・・・とするときに、注意したいこと

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

良くポイ捨てする人「が」います。

ここに、「気になるのが・・・ことです」を付け加えると、どうなるでしょう。

気になるのが、良くポイ捨てをする人が、いることです。

これは「が」がカブルので、好ましくありません。
一つの文に対して、二つの主語が生じていますよね。
ところがご存じの通り、ダブル「がが」文を、あちこちで散見するのです。

なぎさから見た海の遠景
遠くに見えるの「が」、かつて工場「が」建っていた土地

つまり、シングル「が」文そのものを別の目的語にする場合、文章の構成を変えなきゃいけないんです。

気になるのが、良くポイ捨てする人「を」見かけることです・・・目的格に直す
遠くに見えるのが、かつての工場建設地である・・・一連の名詞に変換

もう少し例文を出してみましょうか。

外国人が含まれる
課金対象となるのが、外国人を含む場合

テレビの見過ぎが、目を悪くする
注意したいのが、テレビの見過ぎによる目の悪化

また、「がが」ではなく「はが」の場合、見た目は正しいように見えます。
しかし、構造的には同じです。

課金対象となるのは、外国人が含まれる場合・・・ではなく、
課金対象となるのは、外国人を含む場合

構造的には、修正が必要です・・・ではなく、
構造的には、修正を必要とします

これですね、意外とできていないんですよ、自分でも。
まず、「修正が必要です」というフレーズが浮かんでしまうのでしょう。
そのフレーズに対して、「できあがった文章は」という主格をそのままはめて、

できあがった文章は、修正が必要です

にしてしまっている。
誰も文句を付けないですけどね。また、気付いて直したとしても、評価されないですけどね。
へたしたら「こだわり」の域かもしれませんが、こういうところって、重要なんじゃないかと思います。
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Author:てつまる
神奈川県を中心にフリーで活動しているライターです。
超IT系を除き、医療・各士業・経営者・アスリートへの取材、アーティストプロモート(情報発信)、イベントレポなどを手がけています。

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