[2328]「伸ばす」と「延ばす」

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

この間、痛恨の変換ミスをしてしまいました。
「隣町まで足を『伸ばして』みては」
と書いてしまったのです。
足そのものは「伸ばす」なんですが、行動範囲という意味で使う場合は「延ばす」。
何も考えず、記者ハンに任せてしまったようです。

良い機会なので復習しておくと、
何かをくっつけてエクステンションした場合が「延ばす」。
線路を延ばす、ロープをつなげて延ばす、開催日を延ばす。

そうじゃなくて、曲がったものがまっすぐになる場合は「伸ばす」。
また、元からあるモノの生育・発展もこちらに含まれます。
腰を伸ばす、髪を伸ばす、国力を伸ばす。

道沿いに延びた壁
自然な生育ではないので、まっすぐに「伸びた」壁とは言わない

木なら、まっすぐに「伸びた」幹。
壁なら、まっすぐに「延びた」土塀。
この辺がややこいですよね。

また、ホースを「伸ばす」とした場合は、グルグルになっている1本の状態が前提。
ホースを「延ばす」としたら、つなげたり何かしたんでしょう。
まつげのエクステンションは「延ばす」。
ただの長髪は「伸ばす」。

「伸」はニンベンだから、自然チックな感じ。
「延」のエンニョウは道っぽいから、人工的に付け足した感。
そんな覚え方でしょうか。
ただし、油断していると「隣町まで足を『伸ばして』みては」になっちゃう。
比喩なんですよ、コレは。

比喩になると違うコトバって、ほかに何がありますかね。
「お菓子についつい、手が伸びる」は伸びるでいいでしょう。「首を伸ばして待つ」も同。
追加・付け足し絡みでいくと、「足を延ばす」だけケアしておけばいいのかな。
あっ、自らのアンテナを「延ばす」なんてどうでしょう。
専門のアプリなんかを導入して、情報が得られやすくなった場合、「延ばす」かもしれませんよね。
一方、日経を読んだりする自己努力なら「伸ばす」。
やめた。こういう場合はややこくなりそうだから、アンテナというコトバ自体使いません。

[2327]「適用」と「適応」

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

間に入っている編プロさんが、保険は「適応」だと言い張るんですな。
個人的には「適用」という気もしますが、この手のすったもんだはウンザリなので、もう「適応」でいいです。

ちなみに、「適応」は、自分が変わって合わせていくこと。
生存適応とか、「キミ、適応力あるね」とか、要は「応ずる」。
対する「適用」は、有り物を使い回しすること。
スタイルシートをコピペして適用するとか、要は「用いる」。
なので、保険は「用いる」なんですよ。本来でいえば。

適用と適応が混ざった文章例
厚労省のややこしい資料

ただ、医療の現場では、「この薬が使えるね、効果があるね」という場合、「薬の適応がある」なんて言い方をします。
上記のややこい資料の場合、例えば、「カゼにルル」を想定してみてください。
ルルは、カゼに適応があると。

一方、水虫にも効能があったとしましょう。
これが、「適応外使用」です。
で、その場合、保険が効くのかどうかという意味で、「保険適用」を問うと。
なので、わかりやすさより正確性を追うお役所仕事の典型というか、見た目チグハグな文章ができあがっているわけです。

まあ、ほかのメディアでは「保険を適用」しますけど、アンタのところは適応だな。
しょうがないじゃん、だって。
いま、校閲の仕事もしているので、わかっていて書き分けたライターの「適用」も「適応」に直します。
ゴメンナサイ。
文句は、ボクに言わないでくださいね。
編プロのルールを適用しているだけですから。
そういう業界に、早く適応しちゃってください。

[2326]「傷める」と「痛める」

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

この間の原稿で、つい、胃腸を「炒め」ようとしてしまいました。
世に言う「ホルモン焼き事件」です。
編集の君ら、いいかげん、しつこいって。
それは、それとして。

「傷める」と「痛める」。
何となく使い分けてはいるんですが、気になったので、記者ハンの講釈を聞いてみることにしました。
いわく「傷める」は、体や物に傷を付けることだと。
対する「痛める」は、体の機能を損なうこと、もしくは心の問題であると。

つまり、跡が残ると「傷める」で、見た目にはわからないダメージなら「痛める」。
また、物を対象とした時点で「傷める」であり、気持ちの度合いは「痛める」。
たしかに「パソコンを痛める」なんて書くと、「いてっ」とか声を出しそうで怖いですもんね。
一方、それでもなお、判断に迷うときってありませんか?

唐辛子のイメージ
単なる胃なら「痛める」、胃の粘膜なら「傷める」

記者ハンは例文で、「合成洗剤で肌を傷める」としています。
しかし、「化粧水の使いすぎが肌を痛める」だってありえますよね。
見た目の外傷か、目に見えない機能かって話なんでしょうけど。

あるいは「痛めつける」。
意味としては、泣きを入れさせるってことだと思います。
「傷めつける」だと傷害罪になってしまいますから。
記者ハンも、「傷めつける」を変換候補には出してきません。
でも、ソノアノ、M系といいますか、そういうことを期待している方の場合、「傷めつける」はアリだと思うんです。
やめた、いい例じゃないな。

コンタクトレンズの長時間使用が目を「いためる」。
さて、ドッチでしょう。
傷つくよ・・・というニュアンスなら「傷める」。目に悪いよ・・・なら「痛める」。
でも、両方なんですよ、言いたいのは。
よし、やっといい例を思いついた。

このように、実際は迷うんです。
そうは簡単にいかないんです。
だから、「ホルモン焼き事件」を起こしちゃったんだって。

[2325] バロックなメール

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

敬語表現を、もっと楽に考えませんか。
とくに若い人が多いのかな。何ていうか、「敬語の全部乗せ」みたいなメールを送ってくる人っているじゃないですか。

「何とぞ、この機会にご判断をご下賜いただけましたら幸いに存じます」

みたいな。
要は、「ちょっと考えてみて」ってことでしょ。
この手の華飾を全文にわたってやられると、結局、何が言いたいのかわからなくなるんですよね。
飾り付けが多すぎて、本体が見えない。
自分はこのようなメールを、建築様式になぞらえて、「バロックメール」と呼んでいます。

豪華な装飾が付いたツボ
バロックじゃないですけど、華飾な「つぼ」の例

上の二つの文を比べてみると、文字数にして3倍の開きがあるんです。
つまり、読む手間も3倍。
ご多忙中恐縮・・・とか言っておきながら、本当に敬意を表しているんでしょうか。

もし敬語表現を使うなら、要点だけでいいと思うんです。
単なる項目は、箇条書きにしたっていい。
恐れ入りますが、まず資料をご精読いただきまして、そのうえで内容の真偽についてご判断を賜り、できましたら貴殿のご経験を踏まえましたご高察をお寄せくださると・・・なんてやってないで、

お願いしたい内容は3点です。
1.別添資料の確認
2.不備・誤記などのご指摘
3.このジャンルに関して一言
以上を、ご多忙の折、お手数ではございますが、ご協力いただけないでしょうか。

これで、十分ですよね。
むしろ、わかりやすいという意味でも丁寧。
それが「気持ちを込める」ってことでしょ。
もちろん、冒頭のあいさつ文などは、多少バロックする必要がある。
そうじゃなくて、全部が全部バロックだと、10文字目くらいで読む気をなくします。

礼を失することなく、要旨も的確に伝える

上手な敬語の使い方って、ソコじゃないかと思うわけです。
飾りを3つもつけたからどうだって話じゃない。
とくに、何かをお願いするんだったら、そのこと自体がわからないと。
意を伝えるという本来の趣旨から外れてしまいます。

[2324] 「あるいは」と「または」

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

宇宙規模のゴスロリか、または刺しゅうと科学の融合か。
宇宙規模のゴスロリか、あるいは刺しゅうと科学の融合か。

この間、この両者で迷って、長らく手が止まってしまったんです。

連載を持っている「ロケ地紹介」のコラム。
長寿企画にありがちなことですけど、いわゆるフツーの映画は出尽くしちゃって、どんどんニッチな方向へ進んでいます。
今回は、茨城県を舞台とした、二人の女子高生を巡る物語。
これ以上は、書けません。

記事のイメージとしては、「何もないエリアと思いきや、日本の最先端を走るつくば学園都市や、世界一の高さを誇るギネス大仏なんかがあるぞ・・・」という方向性にしたい。
なので、主人公の一人が、もし、つくば市まで出向いていたとしたら。
そんな下りで、冒頭の文章を思いついたんです。

JAXAの展示ブース
刺しゅう入りの宇宙服ってなコジツケも考えられる

それは、それとして。
「あるいは」は、提示した複数の条件が、どちらもイキている場合・・・のような気がします。
極論すると、両方という選択肢もアリ。
例えば、「お箸、あるいはスプーンでお食べください」なら、考えられる選択肢を羅列しているだけで、どれか一つに絞れとは言っていない。

対する「または」は、一方を選んだとたん、他方が消える場合・・・じゃなかろうかと。
選択を迫られているわけですよ。
「紅茶、またはコーヒーが付きます」とした場合、ダブルは想定していない。
違うかな。

念のため辞書などで調べてみたら、あながち、外れてはいない模様。
そうなるとですね、これは、使い方を考え直さないと。
「お箸、またはスプーンでお食べください」というのは、間違った表現なんです。本当の二者択一を迫られていない限り。
逆はあるかな。
混ぜちゃいけないときって、どういうケースだろ。
そこで気付いたのが、冒頭の文。
両方やったっていいんだけど、ニュアンスとしては「または」なんでしょう。
ああ、いままで間違ってたな。択一の場面で「あるいは」を使ってました。
うん、勉強になった。

[2323] いわゆる「文字数」の定義

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

このコーナーの話題じゃないかもしれませんが・・・。
文字数の認識って、人やOAによるズレがあると思うんです。

Webメディアが一般的に「3000字以上」という場合、これは、ワードの左下にあるカウンターの数字を指すようです・・・少なくとも、自分が経験してきた範囲では。
ただし、ワードには、ご存じのように構造的なネックがあります。
半角英数をいくらたたいても、「連続する塊を1」としか数えないんですね。
試しにワードを開いて、半角英数を打ってみてください。

ワードで打った半角英数
改行を挟んだ2つの塊を、文字数:2としかみてくれない

物理的なスペース制限のないWebの場合、文字数きっちりじゃなくても何とかなる。
半角英数によって多少のオーバーが出ても、目に見える問題は起きにくい。
だから、わかりやすい指標というか、提出原稿と同時に確認できる「ワードの文字数」が、重視されているんだと思います。

他方で紙には、物理的な制限がある。
オーバーは、誌面からはみ出ることを意味します。
それもあって、全角英字を好む媒体が多いのかもしれません。
ちなみにワードは、全角なら、すべて1文字扱いしてくれます。
いずれにしても、打合せの段階で、しっかり確認をしておくべきでしょう。
半角なのか全角なのか。半角の場合はどうカウントしているのか。

話は戻って、Webの半角。
ワードの現象は、ある意味、「書き損、打ち損」なわけです。
なので、スペースの問題というより手間賃の問題として、認識合わせをしておいたほうがいいと思います。
自分が主張の根拠にしているのは、エクセルのLEN関数です。
この関数は、半角も全角も、同じ1文字扱いにしてくれます。
ただし、改行もカウントしてしまうので、若干の工夫が必要でしょう。
「半角も全角も1文字とし、改行は含まない」
場合の書式は、

=LEN(SUBSTITUTE(○○,CHAR(10),""))

○○はテキストをコピペするセルの番号。A4とかB11とか・・・そんなヤツです。
これを、取引し始めた早い段階で、編プロと握っておきましょう。
「いや、ウチはあくまでワードだ」
と言い張る場合、実質の文字数より1割増し程度の作業増をみておいたほうが無難。
ちなみに、この本文は、ワードのカウントで926。
上記の計算式では984でした。
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Author:てつまる
神奈川県を中心にフリーで活動しているライターです。
超IT系を除き、医療・各士業・経営者・アスリートへの取材、アーティストプロモート(情報発信)、イベントレポなどを手がけています。

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