[1394]「バールのようなもの」にバールは含まれるか

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

標題の件。
いまどき、バールとは何かを知らない人のほうが多い気がするなか、定型句のように使われていますよね。
恐らく主眼は「こじ開けた」にあって、バットでも力業でも構わないものの、一例としてのサンプルを表現しているのだと思います。
つまり、バールは含まれると考えていい。

ところが、例示となってくると話は違ってきて、「地獄のような環境」という場合、地獄を見てきた人なんていないわけです。
「雲のような口当たり」「苦虫をかんだような顔」などもそうで、最も身近な「異物」をもって、その様を表現していることになります。
つまり、バールは含まれない。

1394.jpg
見た目がコケのような抹茶せんべい・・・コケは含まれない

これ、現実的な使い分けって、難しいですよね。
読み手のほうは、肌感覚でわかるため、意識しなくてもいいと思うんです。
問題は書き手。
サンプリングか例えなのかによって、注意深く言葉を選ぶ必要があります。

・サンプリングの場合
円板のような形
入道雲が確認されるような天気
帰り道がわからなくなるようなケース

・例示の場合
夏みかんのような風味
鬼のような物言い
切って張ったかのような急ごしらえ

こう見てみると、サンプリングは、事実に限られるんです。人によって違うということがない。
一方の例示はイメージ描写だから、印象に差の出る場合がある。
じゃあ、本題の「バール」ってどうなんでしょう。
「あぁ、これはバールだね。バットじゃないね」
ってところまで絞り込めているんでしょうか。
もし、事実じゃないとしたら・・・。

実はですね、バールのようなの後に「もの」って言葉がくっ付いているの、気付きましたか。
「バールでこじ開けたような」じゃないんです。
「もの」を挟むことで、事実でもイメージでも構わなくなっている。
要は、こじ開けられたんだと。
「もの」によってこじ開けられたんだと。
その「もの」自体は、バールでもバットでも、お好きに解釈してちょうだい。

この、ものすごくトリッキーな仕組みによって、「バールのようなもの」が重宝されているのでしょう。
・入道雲が確認されるような天気・・・入道雲に限定
・入道雲のようなものが確認される天気・・・何でもアリだし、入道雲でもいい
最初に使ったヤツ、すげぇな。

[1393]足し算なのか掛け算なのか、「AやBによるCやD」

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

併用の「や」がダブルとき、その意味するところは幾通りも出現してしまいます。
例えば、標題の「AやBによるCやD」。

1.A+BC+D・・・足し算的な解釈です。
2.(A+B)C+D・・・前半は掛け算、後半が足し算
3.A+B(C+D)・・・前半は足し算、後半が掛け算
4.(A+B)(C+D)・・・すべて掛け算

具体的な例文を探してみましょうか。
悪文が見つかりそうな『政府広報』を探していたら、案の定ありました。

「病気やケガによる緊急移送費用や入院費用の支払い」

おそらく、(病気+ケガ)(緊急移送費用+入院費用)支払い・・・なんですよね。
(A+B)(C+D)のパターンに加え、「支払い」というE項も含んだ、三重の掛け算のようです。
因数分解すると、

病気による緊急移送費用の支払い
病気による入院費用の支払い
ケガによる緊急移送費用の支払い
ケガによる入院費用の支払い

が解になる。
これ、ぱっと見で、わかりますか?

1393.jpg
言わずもがなの茶濁でございます

では、誤解をなくすために、どう修正していけばいいでしょう。
まず、「費用」とあれば「支払い」がらみだと推測されますので、E項は不要でしょう。
次に、前半の「や」のみイキとしてみます。

「病気やケガをした場合の緊急移送費用、あるいは同じケースでの入院費用」

後半の「や」をイキにするとしたら、

「病気をしたりケガを負ったりした場合にかかる、緊急移送費用や入院費用」

好みですけど、後者ですかね。
「や」の乱れ打ちは、都合の良いほうに捉えられるかもしれないので、注意が必要です。
ヤボったいようでも、可能な限り「解」に近い形で記載するようにしましょう。
誤読の可能性が少しでもあれば、抗弁はできないんです。文を書いた人の責任になります。

[1392] 書きコトバの同音異義語

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

幼児と用事のような同音異義語。
文字になっていればわかるため、自分とは無縁と思っていたものの、動画原稿のニーズが増えてきたことで、気を使う必要が生じてきました。
そうじゃなくても、物書きの「ライター」と火を付ける「ライター」のようなカタカナの例だってありますしね。

そうかそうか。
いままでにない観点なので、ちょっと、とまどっています。
例えば地震と自信と自身。
「ジシンはジシンへのジシンがないときにやってくる」
書きコトバだとかえってトリッキーに使えるんですが、音声になっちゃうとね。
そうかそうか。

1392.jpg
ジシンでもゆるがない、ジシンへのジシン

これ、いくらでも出てくるようで。
例えば、強制と矯正と共生と教生と叫声。
キョウセイするのが目的で、キョウセイをキョウセイはしません。そう、キョウセイがキョウセイをあげています。

法律用語が絡み出すと、もっとややこしくなります。
排除と廃除。
ちょっと難しいところで遡及と訴求。
警鐘と敬称と軽症と継承。
使わないって、もともと無理じゃないの?

ワーディングを変えなくても、前後の文脈から判断できるようなときは、こっそり使うしかないですね。
幸いにしてケイショウで済むような努力、そのケイショウを鳴らしていくしかない。それがノウハウのケイショウにもつながるのです。
どうなんでしょ。音声になると、訳がわからなくなるんですかね。

幸いにして軽いケガで済むような努力、その注意喚起をするしかない。それがノウハウの蓄積にもつながるのです。
やはり、こういう原稿がふさわしいように思えます。
あっ、原稿は避けたほうがいいんですか。現行や言行があるから・・・はぁ。

[1391] アクセスなどで使う「より」の誤用

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

ロシア「より」愛を込めて
宇宙「から」のメッセージ

ともに映画のタイトルですが、経路を示す場合、「より」は誤用になります。
少なくとも公文書の世界では、そう規定されているようです。
「より」は比較、「から」は経路で使いなさいと。
ですから、商用文のアクセスなどでは、「から」を使うようにしています。

では、なぜ混同されるようになったのかというと、両方に「選択肢A→選択肢B」という動きが含まれているからだと思うのです。
チャーハン「より」ラーメンと言う場合、チャーハンというバッドチョイスを経由して、ラーメンというグッドチョイスに至るニュアンス。
経由というより、悪いほうへ振って「から」、良いほうを見直す・・・みたいな。
ね。実際、経路の「から」で表現できるじゃないですか。

1391.jpg
『宇宙からのメッセージ』的な茶濁でございます

一方、最寄り駅「から」徒歩約3分という場合。
これは純粋に、起点「から」終点を表し、論じることでもないでしょう。
問題は、一部に、「より」を使ったほうが丁寧に聞こえる・・・という意見のあることなんです。

女王陛下より、謝意が示されました。
篤志家より、寄付が送られました。

でも、公文書チックに読み解くなら、
女王陛下より(も)、(ものすごい)謝意が(誰かさんから)示されました。
と解釈せざるを得ない。
このような二義の可能性がある以上、意識して使い分けていくしかないですね。

最後。ぱっとした思いつきで恐縮ですけど、こんなコピーを考えてみました。
「電気の未来は、火力から再生可能エネルギーへ」
経路としての「から」で間違いないんですけど、ニュアンスとしては比較ですよね。
誤用を加速する使い方と思われるので、個人的には、できるだけ避けていくつもりです。

[1390]から・まで、以上・未満、以下・超

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

範囲を指定する表現について。
時間とそれ以外の単位では「書き方が異なる」ということを言いたいんですが、しばらく原則論にお付き合いください。

良くあるのは、
「16歳未満は1000円、16歳以上は2000円」
というパターン。
当たり前ですけど、16歳は2000円です。
同じ意味を15という数字で書くなら、「15歳以下は1000円、15歳超は2000円」になります。
ここまでは一般論。

次に「から・まで」ですが、これは必ずセットで用います。
「入場料1000円 3歳から15歳まで」
「より」は比較で使う言葉ですし、「まで」を省いてもダメ。
ところが、時間になると、例の「~」というヤツが出てくるんです。

1390.jpg
一例としての茶濁でございます

「まで」に呼応する記号がないのか、この場合に限り、省略可ということになっています。
厳密な決まりではないものの・・・時間表記に限定したほうが好ましいでしょう。
料金などに使われる場面を散見しますが、商業文なら、「から・まで」が原則。

レンタカー利用料
小型車 3500円~5000円
中型車 4500円~6500円

というのは、本来NG。
看板などでは、見やすさを重視して、使ってみてもいいですけどね。
ただし、「から・まで」は、構造的な欠点を含んでいるのです。

タイムチャージ
10時から16時半まで 1000円 / 10:00~16:30 1000円
16時半から20時まで 2000円 / 16:30~20:00 2000円

まあ、意味としては通りますが、正しいピッチじゃない。
16時半の立場があやふやになってしまいます。
なので、美しくはないですけど、以下のようにせざるを得ないでしょう。

10時から16時半まで 1000円 / 10:00~16:30 1000円
16時半を超えた場合 2000円
閉店時間 20時

「~」のパターンはやりようがないですね。
16:31~20:00とかにすれば別ですが。
形式にとらわれデタラメを書くより、本当の内容を記載してください。

[1389]ファインディング「にも」

~正解なんてない!日本語の選び方【文章作成のコツ】~

FIXしていない未来の予定などに、「にも」を使うことがあります。
ドコソコの大統領が来月にも、訪日の見込み。
事件の真実は来週にも、明らかになる模様です。
みたいな感じですね。

イメージとしての「にも」は、ココ「にも」あったというような、「意図をしていない2個目の発見」で使われるじゃないですか。
なぜ、未来にも「にも」が使われるのか。
良く考えてみると、わからなくなってくるのです。

1389.jpg
こんなところ「にも」、春の息吹が

頼りの『新明解』にも載っていなかったので、いろいろと調べたあげく、
「複数の選択肢のうち、一つを明示する」
という用法になるのではないかと、勝手に結論付けました。

(自宅は調査済みという前提で)学校「にも」いなかったよ。
(いつものスーパーで売っているのに加え)こんなところ「にも」あったんだ。

この延長で、
(未来へ続くたくさんの日程のなかから)来月「にも」、訪日の見込み
(もしかしたら前後にズレるかもしれないけど)事件の真実は、来週「にも」、明らかになる模様です。
そういう解釈でいいのではないかと。
つまり、すったもんだがあった感やら、ビチっとは決まっていないあやふや感が、そのニュアンスに含まれるわけです。
もともと、推量とセットですからね。
逆に言うと、人間の意思が介在しない場合や、間違いなく起こる出来事には使えません。

春「にも」、このサクラは咲くだろう・・・とした場合、その裏に何かしらのストーリーがありそうです。
どんな夜「にも」、必ず朝は訪れるはずだ・・・同上。
この思わせぶり感が、報道の冒頭などで好まれるのでしょう。
「実はね・・・」っていう続きへつなげられますから。
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てつまる

Author:てつまる
神奈川県を中心にフリーで活動しているライターです。
超IT系を除き、医療・各士業・経営者・アスリートへの取材、アーティストプロモート(情報発信)、イベントレポなどを手がけています。

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